内積は a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ、成分では (a1,a2)⋅(b1,b2)=a1b1+a2b2 を用いる。2 つのベクトルが直交することは内積が 0 になることと同値である。
1. ベクトルの直交条件
問題 a=(2,3), b=(1,−1) とするとき、次の各組のベクトルが直交するように実数 t の値をそれぞれ求めよ。
(a) a, a+tb (b) a−b, a+tb (c) a+tb, a−tb
解答 よく使う値を先に計算しておく。
a⋅a=13,a⋅b=2−3=−1,b⋅b=2
(a) a⋅(a+tb)=a⋅a+t(a⋅b)=13−t=0 より
t=13
(b) a−b=(1,4), a+tb=(2+t, 3−t) だから
(1)(2+t)+(4)(3−t)=14−3t=0⟹t=314
(c) (a+tb)⋅(a−tb)=∣a∣2−t2∣b∣2=13−2t2=0 より t2=213、
t=±226
2. 中線定理と内積の等式
問題 a,b を 2 つのベクトルとするとき、次の等式が成り立つことを証明せよ。
(a) ∣a+b∣2+∣a−b∣2=2(∣a∣2+∣b∣2)
(b) ∣a+b∣2−∣a−b∣2=4(a⋅b)
解答 ∣a±b∣2=∣a∣2±2(a⋅b)+∣b∣2 を用いる。
(a) 2 式を加えると内積の項が消えて
∣a+b∣2+∣a−b∣2=2∣a∣2+2∣b∣2=2(∣a∣2+∣b∣2)■
(b) 2 式を引くと
∣a+b∣2−∣a−b∣2=4(a⋅b)■
3. シュワルツの不等式
問題 ベクトル a,b に対して、シュワルツの不等式 ∣a⋅b∣≤∣a∣∣b∣ を証明せよ。ここに左辺は内積 a⋅b の絶対値を表す。
解答 b=0 のときは両辺 0 で成立する。b=0 とする。任意の実数 t に対して
∣a−tb∣2=∣a∣2−2t(a⋅b)+t2∣b∣2≥0
が成り立つ。これは t についての 2 次式で、すべての t で ≥0 だから判別式は ≤0:
{−2(a⋅b)}2−4∣b∣2∣a∣2≤0⟹(a⋅b)2≤∣a∣2∣b∣2
両辺の平方根をとって
∣a⋅b∣≤∣a∣∣b∣■
4. 等号 a⋅b=∣a∣∣b∣ が成り立つ場合
問題 a⋅b=∣a∣∣b∣ が成り立つのはどのような場合か。
解答 a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ なので、a⋅b=∣a∣∣b∣ は cosθ=1、すなわち θ=0 を意味する。したがって
- a,b が同じ向きのとき(一方が他方の正のスカラー倍、b=ka (k>0))、
- または a,b の少なくとも一方が 0 のとき
に成り立つ。(絶対値つきの等号 ∣a⋅b∣=∣a∣∣b∣ は「平行(同じ向き・逆向きのいずれか)」で成り立つが、絶対値なしの場合は同じ向きに限られる。)
5. 正三角形と 3 等分点
問題 1 辺の長さが 1 である正三角形 OAB において、OA=a, OB=b とし、辺 AB を 3 等分する点を M,N とする。
(a) a⋅b の値を求めよ。
(b) OM, ON を a,b で表して、OM⋅ON の値を求めよ。
解答
(a) ∣a∣=∣b∣=1、a,b のなす角は 60∘ だから
a⋅b=∣a∣∣b∣cos60∘=1⋅1⋅21=21
(b) A→B の向きに A,M,N,B と並ぶ。A の位置ベクトルは a、B は b だから
OM=32a+31b,ON=31a+32b
OM⋅ON=92∣a∣2+95(a⋅b)+92∣b∣2=92+95⋅21+92=94+185=1813
6. 直角三角形の垂線の足と内積
問題 直角三角形 OAB において、直角をはさむ 2 辺 OA,OB の長さがそれぞれ 4,3 であるとする。O から斜辺 AB に下した垂線の足を H とするとき、内積 OA⋅OH の値を求めよ。
解答 座標を O=(0,0), A=(4,0), B=(0,3) にとる。H は AB 上の点で OH⊥AB。H=A+s(B−A)=(4−4s, 3s)、AB=(−4,3) として
OH⋅AB=(4−4s)(−4)+(3s)(3)=−16+25s=0⟹s=2516
よって H=(2536, 2548) となり
OA⋅OH=(4,0)⋅(2536,2548)=25144
7. 平行四辺形の面積(内積による表示)
問題 a,b を 0 でない 2 つのベクトルとし、a=OA, b=OB とする。OA,OB を 2 辺とする平行四辺形の面積 S は
S=∣a∣2∣b∣2−(a⋅b)2
で与えられることを証明せよ。
解答 a,b のなす角を θ とすると、平行四辺形の面積は S=∣a∣∣b∣sinθ。したがって
S2=∣a∣2∣b∣2sin2θ=∣a∣2∣b∣2(1−cos2θ)=∣a∣2∣b∣2−(∣a∣∣b∣cosθ)2=∣a∣2∣b∣2−(a⋅b)2
根号内はシュワルツの不等式より ≥0 なので
S=∣a∣2∣b∣2−(a⋅b)2■
8. 平行四辺形の面積(成分表示)
問題 a=(a1,a2), b=(b1,b2) とすれば、a,b を 2 辺とする平行四辺形の面積 S は S=∣a1b2−a2b1∣ で与えられることを示せ。
解答 問 7 の式に成分を代入する。
∣a∣2∣b∣2−(a⋅b)2=(a12+a22)(b12+b22)−(a1b1+a2b2)2
展開すると(ラグランジュの恒等式)
=a12b22−2a1b1a2b2+a22b12=(a1b2−a2b1)2
したがって
S=(a1b2−a2b1)2=∣a1b2−a2b1∣■
9. 座標で与えられた三角形の面積
問題 3 頂点の座標が (2,1), (−1,3), (3,6) である三角形の面積を求めよ。
解答 頂点 P=(2,1) を基点にとると
a=(−1,3)−(2,1)=(−3,2),b=(3,6)−(2,1)=(1,5)
三角形の面積は平行四辺形の半分だから、問 8 より
S=21∣a1b2−a2b1∣=21∣(−3)(5)−(2)(1)∣=21⋅17=217